コルドバのパティオ(予習編)

コルドバでパティオを見て回るのに、パティオ祭りはうってつけの機会です。
普段街路から閉ざされている個人宅の中庭が解放されるのですから。くわえてこのお祭りで公開されるパティオは、住民によって丹精込めてしつらえられ、自信をもってコンテストにエントリーされた珠玉の空間です。コルドバでもっとも花が咲き乱れる5月の半ばに開催されるというのも重要なポイントです。

毎年かわる開催日や公開されるパティオは事前に公式サイトでアナウンスされます。
今年からなのか、公式サイトには写真もみれる地図があります。ぜひこちらでもパティオのすばらしさを体感していただければ!

観光側のお祭りへの参加については、特別なエントリーや権限はなく、必要なことを強いて挙げるとすれば、個人宅にお伺いするマナーとパティオへの尊敬と称賛の念くらいでしょうか。
ホテルやインフォメーションセンターに行くと公開されているパティオの地図を受け取ることができます。
それがこちら。

おそらくですが、パティオの住人が運営側にエントリーすることで見学可能なパティオが決まるので、開催年によって若干の違いはあると思います。でもガイドブックなどに載っている有名なところは常連なんじゃないかな。

私が回ったところ感じた大体の傾向を4種類に分けました。(上の地図に赤字で示した地域)

  1. ガイドがおすすめする、美しいパティオが密集した地域
  2. パティオの内容としてはお薦めだし、メスキータやアルカサルなどの観光スポットから近いし、パティオが密集しているので動き回る必要もない……そのかわりちょっと信じられないくらいの混雑です。おそらくツアー客の順路になってます。30分待ちなどざら。

  3. 正統派パティオが多めの地域
  4. 多少歩き回る必要があるけれど、かなり正統派な建築構造のパティオがそろっています。構造については後で述べます。私のお気に入りの地域です。

  5. 郊外のわりと新しめの住宅の中庭をとにかく花で飾った地域
  6. 後述しますが、コルドバは旧市街地の中でも古い地域と新しい地域に分かれていて、このあたりは新しい地域の外れになります。パティオ構造はわりとフリーで、どちらかというと住居の間に作られた自由な形の中庭に、これでもかと花を生い茂らせた努力賞的なパティオが多いです。パティオ建築に興味を持った人にはちょっと微妙かもしれない反面、お花が好きな人にはお薦めの地域。

  7. かなりフリーダム…これパティオ?というのも多いが贅を凝らした地域
  8. はしっこの方はもはや中庭ですらない……けれども閉ざされた裏庭のような趣のある庭ばかりでした。広い空間を使った庭が多く、手間とおかねはかかってそう。古典的なパティオに飽きたらつまむのにちょうどいい地域。

こんな地域傾向がありますので、好みに沿って回ってみるのがいいんじゃないかと思います。
旧市街地の新旧については、街角にかかってたこの地図がわかりやすいです。

城壁に囲まれた地域の真ん中にも城壁があります。この真ん中から左がメディナと呼ばれるローマ時代からある地域です。右側はアジャルクイアと呼ばれていた地域で、十世紀ごろに膨れ上がる人口を収容するために拡大された地域です。

メディナのほうが袋小路が多いです。その奥の住居の中にいくつものパティオがあり、パティオを通り抜けられる住民だけが別の袋小路に出られるという構造になっています。これはかつて侵略されることの多かったコルドバの住民の自衛の策だったといいます。街路から住居への入り口は頑丈な木戸や鉄の扉で閉ざされていることが多く、通りを歩くものを拒絶する雰囲気なのですが、ひとたび中に入ると裏にも抜けられる居心地のいい空間が広がっているというわけです。

ちなみにこの古地図のようなイラストの手前に描かれている、マッチ箱を倒したような建造物がメスキータ、その左側の庭園がアルカサル。
街の南を流れる川はアンダルシアを横切るグアダルキヴィル川でそこにかかるのがローマ時代に建設されたというローマ橋です。

最後に、パティオの構造について。
これは『建築探訪11 南欧のミクロコスモス』(畑 聡一/丸善)から知識を得ました。

この本をふまえつつ、私の独断と偏見によるパティオ要素を列挙します。

  • 方形(正方形かそれに近い長方形)である
  • さいしょにパティオに足を踏み入れて、「あ、パティオだ」と思う最大の要素。四角でないと、パティオではなく単なる中庭という印象になります。

  • 列柱廊に取り囲まれている
  • これはコルドバよりもセビリアなどで見られる荘厳な様式のようです。ローマ様式を踏襲した貴族然としたたたずまいのパティオになります。また、空に開いた明るい中央部と回廊で陰になった空間のコントラストが美しく、奥行き感もとてもいいです。四面すべてとは言わないけれど、どこかにこの空間があるのが好きです。

  • 二階の回廊やそこへのアプローチ階段
  • 柱廊のアドバンスコース的な二階の回廊。庶民宅ではこれはほとんどありません。アプローチ階段があると、そこが恰好の花台となり、植物を立体的に魅せている家が多かったです。

    パティオとその周りの部屋の構成に関しては、以下の間取り図がわかりやすいのでごらんください。

    建築探訪11 南欧のミクロコスモス(畑 聡一/丸善)28ページより引用
  • 鋳物の飾り扉がある
  • たいていのパティオの入り口には、鉄の透かし扉があります。イスラム様式を踏襲し、植物を模した模様か幾何学模様がメイン。私はとくに幾何学模様の複雑な飾り扉がすきです。透かし窓は日本や中国の格子戸も好き……そこから覗き見る美しい空間がたまらないと思うのです。個々のパティオを紹介する際にも折々触れたいと思います。

  • 床面のしつらえは玉石、タイル、煉瓦
  • アンダルシアに特徴的な玉石の床面。おそらく円盤状の石を使っているのですが、平たい部分を表面に出すのではなく、円盤を立てて敷き詰め、ベージュと黒の二色で模様をつくるのがこの地方の特色のようです。はだしだと足つぼマッサージになりますね。
    その他、白黒のタイルも多いです。郊外に行くと煉瓦の床も散見されます。

  • 壁面のアラベスク
  • イスラム文化が色濃く残る街ならではの、腰の高さまでのアラベスクタイル。アルハンブラ宮殿ではこれでもかとみられますが、コルドバのパティオにもありますよ。

  • オアシスを感じさせる水盆や井戸
  • 昔はちゃんと井戸があって水を汲んでいたりもしたのかもしれませんが、もはやオブジェとなっている水場。でもこれは重要なポイントでどんな狭いパティオにも何らかの形で存在しています。さらに何らかの水音があるととてもよいです。コンテストにエントリーしているパティオはなみなみと水をたたえ、花びらを散らすなどの趣向をこらしていたりもしますが、たまに街路から見える放置されたパティオなどでは水盆が枯れており、打ち捨てられ感が甚だしいです。

  • 隅々に飾られた骨董の数々
  • 昔の栄華を懐かしむ意味も含めて骨董が飾られているそうです。パティオに面した一室をわざわざ昔のしつらえにして公開しているところも多いです。

  • 壁面を覆いつくす花
  • コルドバのパティオといえば、何をおいても花が特徴的なんだそうです。栄華ははるか昔、中世以降は落ちぶれ続けた街の庶民は建築に財をつぎ込めないため、そのぶん花で飾る特徴があるんだとか。私は建築がすきだけどな……でも花はほんとうにすごいです。一日2回は水をやらなければならないそうですが、たぶんこれ、仕事のない人がまる一日かけて毎日やる作業です。また、さらに閉ざされたバックヤードではバックアップの鉢も育てているそうです。

こんなところがパティオのみどころです。
ここまで説明するのにかなりエネルギーを使ってしまったので、このさきどこまで続けられるか不安ですが、次からはぼちぼち、パティオの紹介をしたいと思います。

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