私はこれまでオリジナルの同人誌を、中長編3本、計1000ページくらいを20年ほどかけてゆっくり作ってきました。

その経験の甲斐あって、昨年、わりとすんなりと出版社の担当さんがつくという幸運に恵まれました。そして同人誌の新刊『星狩りの夜』の制作が一段落した3月末から、新作の検討に入りました。

当然ですが、すぐに新作を作って掲載というわけにはいきません。
昨年の面談時に、担当者が私に求める作家性や目標などをざっくり決めていましたので、そこから書けそうなプロットやネームを送り、返信でアドバイスをもらっていました。担当さんサイドは私の能力を探るという意味があったと思います。私の方では掲載誌の顧客ニーズや業界のビジネスモデルを調査し、不足技術の洗い出しをしていました。
そしてそこで私の決定的な短所が浮き彫りになりました。

私はキャラクターを作れなかったんです。

キャラクターが作れないというのは、商業漫画(特に少年漫画や少女漫画)では致命的です。特に大事な「キャラの深堀り」や「感情の遷移」や「人間関係の遷移」がからきしだったのでした。
そもそも私は、おそらく発達障害的な意味合いで、他人への興味が人より薄いのです。実社会でも顔と名前がまったく覚えられずに苦労しています。会話でも相手の心理や反応が読めずに不思議ちゃん扱いされる不本意な事態が多発していました。だから他人が当然のようにできるキャラ作りが私にはたぶんできません。
ただ、発達障害は手法の確立でカバーできます。おそらくキャラ作りも論理だてた手法である程度は克服できるでしょう。でも今から自分で、苦手なキャラ作りスキームをゼロから構築するのは到底無理…。

そう考えて、ネットの海を血眼になって漁って出会ったのがこの本です。

そしてもう1冊。ついでにこちらも買いました。

この本の作者(マンガ制作の塾講師)によると、マンガ制作は8割はマニュアルで2割はオリジナルだそうです。そしてその8割に相当するマニュアルがこの本に収められています。

これは私の父親の信条なのですが、「最も効率の良い学習方法は、経験やデータが蓄積された学習塾のマニュアルに愚直に従うこと。それでダメなら能力がない」というがありまして…父親はかつて、難易度の高かった弁理士試験時代にこの信条に従って田舎住まいで2年で合格した実績があるので信憑性があります。

そんなわけで、愚直に従いました。

今回は急ぎ完成させなければならない32ページの少年漫画のネームをベースにすることにしました。一度添削されて大幅に修正し、でも全然だめで担当さんから「可能なら、キャラのこういった感情曲線、人間関係を主題に持ってきてください」とかなり親切なアドバイスをいただいたものの、持っていき方がわからず途方に暮れていたネーム。

終盤の種明かし的なネタがもともとあって、それを軸に32ページのストーリー漫画に膨らましていたので、キャラ設定が全然できておらずブレブレでした。まずはそこからテコ入れです。
『マンガキャラクター講座』の少年漫画のキャラクターマップから、今回の主人公の性格傾向に当てはまる行だけ抽出してキャラクターを埋めていきました(本来は全行を埋めて使うものです)。そもそも、主人公の性格傾向もブレブレだったので、性格傾向を定めるだけでだいぶ改善しました。さらに、少年漫画に必要なキャラクター(ライバルと吊り上げ役)が不足していることもわかり、表に従って追加。
今までにない魅力的なキャラクターが揃ったように感じました。

今回、参考文献が2冊あって被る内容もあるので、ここから先は『漫画ストーリー講座』をメインで参考にし、200字の企画文章→プロット→ネームの順に進めました。

200字の企画文章は、今回やる必要があるのかわからなかったのですが、中盤までの引きを見極めるのに便利そうだったので作ってみました。

プロットは、「ストーリーの5つのパート」「ページ数に応じた物語要素数」を取り入れました。今回は32ページの予定だったので要素(行)の数は13。表で作成し、列に
・ページ(ネーム作成時の目安として)
・パート種(イントロ、中盤①、中盤②、山場、後日談)
・プロット(シーンやエピソードなど)
・主人公の感情(不得意なので独自に追加、今回は相棒との人間関係に焦点を当てて記載)
・期待される読者の感情(不得意なので独自に追加)
を配して、頭の中に浮かんできたエピソードから埋めていきます。途中で行を入れ替えたり追加・削除したり、いろいろこねくり回しました。内容を変えるたびに、主人公や読者の感情の流れに滞りがないか確認しました。

とりあえずこのプロットを経過報告として担当さんに送ったところ、「ページ数に対して内容が濃すぎない?」とお返事をいただいたのでちょいちょいそぎ落としつつ、力技でネームを書いたらなんとかOKをいただきました。

そんなわけで、途方に暮れていたネームがこのマニュアル本のおかげで何とか担当さんの満足するレベルまで持っていけたので、とても感謝しています。しかも、同人誌時代には構想~プロット~ネームの速度が異様に遅く、ずっと悩んでたのですがそれもついでに改善できそう!

ちなみに担当さんからは絵柄やデッサン、コマ割りや演出に関しては指摘を受けたことがなく、及第点のようです。いままではキャラの深堀りができなさすぎて指摘していなかっただけかもしれませんので今後の動向を観察したいと思います。

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